特集 社会からみた医療の質の評価
患者が望む医療のあり方
星野 一正
1,2
1京都大学
2日本生命倫理学会
pp.406-408
発行日 1993年5月1日
Published Date 1993/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900358
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患者の価値観の多様性
医学の理論的発展と共に医療機器の開発や医療技術の急速な進歩により,従来寿命と諦めざるをえなかったような病気や怪我が治療の対象となり,社会復帰まで可能な時代になってきている.一方,斬新な生命維持装置による終末期医療への介入が患者の延命を可能にしてきた.それに伴って,人工呼吸器が進歩向上するまでは見られなかった脳死という新しい死の現象が斬新医療の落とし子として臨床現場で見られるようになり,人の死の診断において,従来のいわゆる三兆候説に基づく死の社会的認識を揺るがす大きな問題となった.また,従来医師の手に委ねられていた患者の「死の迎え方」についても患者自身が決めたいという風潮が高まり,尊厳死はもちろん安楽死をも求める人々が次第に多くなってきている.死をめぐる問題ばかりではなく,人間の誕生をめぐる問題にも革命的な変化が起こっている.
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