人
甲状腺専門医として学問と社会の融合を実践した 伊藤病院院長 伊藤國彦氏
飯野 史郎
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1昭和大学藤が丘病院内科
pp.108
発行日 1981年2月1日
Published Date 1981/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207373
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東京原宿の表参道にある甲状腺専門の伊藤病院の院長さんである.1日の外来患者数平均450人,年間新患数7,000人,年間手術数1,300件といえば,その繁栄ぶりがお分かりになると思う.この病院には宣伝用の看板は一枚もない.その必要もないほど有名である.この病院の基礎は先代伊藤歩博士によって築かれたが,昭和34年女婿である國彦先生が先代の遺志を継承された.爾来,苦節20年,今日の伊藤病院に発展させた氏の功績は大きい.自らが甲状腺専門医に徹するばかりでなく,看護婦,栄養士から調理士,事務員に至るまで『甲状腺の専門家たれ』をモットーにしておられる.
氏の性格は控え目でテレ屋,シンは強いが涙もろく,長者番付の1位,2位を争う人とは思えないほど質実であり,患者思いである.仕事をするに当たっては冷静にして沈着,その手術は巧緻にして迅速,手術例は2万を超える.学問に対する情熱は大学(昭和23年慶応義塾大学医学部卒,33年まで同大外科島田信勝教授に師事)を離れてからも衰えず毎年学会報告を怠ったことがない.進取の気性に富み,基礎代謝測定器第一号機,PBI測定装置,放射性ヨード治療などをいち早く導入して,学問的レベルを常に大学並に保っておられるのは立派である.
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