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ホスピスの真実を問う—イギリスからのリポート―ホスピスは末期患者のユートピア?
佐伯 みか
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.80-81
発行日 1996年1月1日
Published Date 1996/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904997
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イギリスのホスピスムープメントが1960年代後半に始まり,アメリカに普及したのが1970年代前半であったのに対し,日本でその理念が浸透しはじめたのは1980年代にはいってからのことである.したがって日本においてはまだ,施設の数を増やすことや,ホスピスの意義・理念の普及に重点が置かれており,その実践方法についての議論はほとんど行なわれていない段階である.緻密に検討していくには,あまりにも国内の実証的なデータの総量が少なく,ソース(出所)に偏りがあるのだ.たとえば,ホスピスが日本でも必要なのか,あるいは欧米式のホスピススタイルを直輸入して実践しても良いのか,それとも日本の文化社会的背景に適したほかのホスピススタイルを新たに検討するべきか,もし後者を選択するとしたらどのようなスタイルが適していて,それを判断するためにはどのようなデータが必要なのかといった点について,今後ひとつずつ取り組んでいかなければならないであろう.
本書はこのような状況下で,今後の日本でのホスピスの存在意義そのものと,存在しつづける際のあり方を検討するのに重要な視点とデータを提供してくれる好著として,ご一読をすすめたい1冊である.
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