精神病院医療の展開 対談
80年代の精神科医療行政—病院をめぐって
大谷 藤郎
1
,
金子 嗣郎
2
1厚生省公衆衛生局
2東京都立松沢病院
pp.81-86
発行日 1980年1月1日
Published Date 1980/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207069
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精神科医療行政のエポック
金子1980年代というのは,いろいろな意味で節目になるように思われます.というのは,ベルツが東大の内科の講義の中で精神科を初めて講義したのが明治12年(1879)です.これは一時,明治15年説があったんですが,内村祐之先生も指摘されていますが,ベルツの日記を見ると,やはり12年ということです.また松沢病院の前身の東京府癲狂院が明治12年にできています.すなわち日本精神医学がその緒について以来,大体1世紀経っている.そのほか,1979年に日本精神病院協会とか,東京精神病院協会とかがそれぞれ30周年を迎えている.また1950年の精神衛生法の制定以来30年.更に薬物療法が入ってから大体4半世紀.
そこで,戦後の精神科医療を振り返ると,精神衛生法の私宅監置の禁止により,いわゆるベッドをつくることが精神衛生行政の目標となり,これがだいたい昭和30年代から始まる.薬物療法の進歩とともにベッドが増加し40年代にあるレベルに達すると,売り手市場と買い手市場のバランスが崩れて買い手の告発が始まる.その現れが43年ころからの精神病院でのいろいろな事件の続発であり,44年ころからの大学の精神科医局解体の運動とか学会の改革運動である.これからほぼ10年になりましたが.
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