東西南北
80年代の技術展望
石井 威望
1
1東京大学工学部産業機械工学科
pp.332
発行日 1980年4月1日
Published Date 1980/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202043
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80年代について,バラ色の未来を語る人は少ない.中東情勢一つをとってみても,年初以来その動きは誠に不気味である.それに引きかえ,70年代は大阪の万国博とともに華麗な幕明けであったことが想い出される.筆者らのいわゆる昭和一ケタの技術屋は,万博会場に未来の科学技術の夢を思う存分に描いたものである.例えば,コンピューターをふんだんに駆使したコンピュートピアのショーなどといった具合であった.確かに,ある意味では技術屋冥利につきるという感じがしないでもなかった.それは石油ショック前の資源過剰気味の時代であり,人類がついに月面着陸に成功したというアポロ計画の興奮いまだ醒めやらぬ時代でもあった.
しかし,それからの10年間で事情は完全に一変した.経済大国ではあっても資源小国にしかすぎないことがかくも鮮明になった現在の日本は,80年代以降自らの生存をどうして支えていけばよいのであろうか.確かに当面自動車,鉄鋼,電気機械などは格段の国際競争力を持っている.しかし,それがいつまで続くかという不安とともに,既に欧米で起こっている日本製品の輸入規制論議の行方いかんによっては,いつ現実に最大級の危機が訪れるかもしれない.
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