特集 80年代の病院医療の課題
医療費危機と公立病院の運営
諸橋 芳夫
1,2
1全国自治体病院協議会
2総合病院旭中央病院
pp.29-31
発行日 1980年1月1日
Published Date 1980/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207054
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医療費危機とその原因
医療費の増加状況をみると,その額は昭和30年度2,388億円,昭和40年度1兆1,224億円,昭和50年度6兆4,779億円,昭和52年度8兆5,600億円,昭和53年度は10兆円を突破と増加を続けてきている.また,国民所得に対する医療費の割合をみると,昭和30年度においては3.27%であったが,昭和52年度においては5.59%となっており,医療費は,国民所得の増加をはるかに越えて急増してきている.このままで推移すれば,医療費の増加は大きく家計を圧迫し家庭経済を破壊するか,保険財政を崩壊させるか,医療機関を破滅に導くか,いずれかの道をたどることとなろう.まさに80年代,特に後半においてはその岐路に立たされることになるであろう.このように医療費の危機を招いた原因はどこにあるのか.まず,①我が国の医療供給体制に問題があるといえよう.すなわち各地の病院・診療所が無計画に設立されてきたことに原因がある.終戦後一時公立病院を中核として,計画的に医療機関を配置する方針が立てられたこともあったが,その後民間の医療機関が増加するにつれ,民間医療機関依存の考え方が出され,その結果,商業的に,医療の人的・物的施設の重複投資が行われる傾向となった(表).
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