人
人呼んで西郷さん—済生会静岡病院院長 岡本一男氏
内野 滋
1
1大阪府済生会吹田病院
pp.552
発行日 1979年7月1日
Published Date 1979/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206900
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畏友岡本さんが三菱重工の貧弱な診療所を譲り受けて済生会静岡病院を発足させたのは昭和23年であるから爾来30有余年,その間昭和32年には静岡県で初めてアイソトープ治療設備や心肺呼吸装置を備え,新進気鋭の医師を招聘して今では720床,外来1,000名を越える大病院に育て上げた実績は刮目に価する.元来済生会病院は本部からの財政的援助のない文字どおりの独立採算性であるから自力で今日の大病院を作り上げた手腕は見上げたものである.人呼んで彼を西郷さんという.
風貌もさることながら豪放磊落,項事にこだわらずしかも幾度か死線を越えたこともよく似ている.例えば戦地で敵陣に包囲され味方はほとんど壊滅したが,彼は脱出して一命を得た.また5年前には診療中精神科の患者に襲われ,左肺を貫き肝臓に達する刺傷を受けたが,即刻手術したために奇蹟的に助かった.2年後にも同じ凶漢に襲われたが幸運にも彼は助かったが彼をかばった看護婦さんは無残にも即死した,これは西郷さんが僧月照に同情して薩摩灘に投身し,月照は水死し西郷さんは救助されたことといささか軌を一にしている.
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