今月の本棚
—オッレ・ハンソン 著 柳沢 由美子・ビヤネール多美子 訳—「スモン・スキャンダル—世界を蝕む製薬会社」
日比 逸郎
1
1国立小児病院
pp.516
発行日 1979年6月1日
Published Date 1979/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206894
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薬剤監視への新しい問題提起
"産業システム"との孤独な戦い
スモンという薬害のことは,日本の国民はだれもが知っている.すでにその元凶であるキノホルムを代表とするオキシキノリン製剤は,日本では発売禁止になっているし,1971年5月以来の各地のいわゆるスモン裁判によって,スモン薬害のすべてが明るみにだされている.それなのに日本以外の国では,この恐ろしい事件は一部の識者を除いてほとんど知られていないし,元凶のオキシキノリンは現在もなおチバガイギー社などによって大量に製造され,世界各地で売りまくられているのである.日本では当局の集計でも約1万,実際にはその数倍の患者が確認され,その3〜6%が死亡しているというのに,日本以外の国では何百万の人々がこの薬を40年間も使い続けていて,スモン類似の患者発生は40〜60例,死亡例は1例の報告もないというのが,情報化地球時代といわれるこの時代における医学情報の現状なのである.
スエーデンの小児神経疾患の専門医である著者のオッレ・ハンソンはオキシキノリン製造の元凶たるチバガイギー社と,それを取巻く"産業システムに乗った医者たちの集団"を相手にしたドンキホーテ的な孤独な戦いを展開した人である.
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