精神医療の模索・17
治療的生活共同体の試み—「あさかの里」の理念と実践
菅野 圭樹
1
,
半田 芳吉
2,3
1郡山精神病院診療部
2郡山精神病院福祉課
3あさかの里
pp.407-412
発行日 1979年5月1日
Published Date 1979/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206856
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閉鎖病棟を中心とした精神病院での治療にはおのずから限界があり,管理的治療または管理的看護(時には管理的処遇)が優先されてしまう.この管理的云々の批判と患者の人権擁護の立場から,開放病棟の実践が,ここ数年来盛んに主張されるようになってきている.「開放病棟がなければ精神病院にあらず」と言われかねない昨今である,しかし,開放病棟があれば,精神障害者,特に精神分裂病者の抱える問題をすべて解決できるものでもない.彼らが抱える問題は数多く,単に医療という狭いわくの中だけで解決できないものが多々ある.地域社会の問題,家族の問題,本人の問題,職業の問題,結婚の問題,経済の問題等々,精神病院の体質問題を除いても,数えあげればきりがないことは周知のことである.また,精神科におけるリハビリテーションそしてアフターケァの問題がある.この必要性は近年とみに重視されてきているが,今日の精神医療の中では,医療費の問題やそれに携わる人員の問題などで,十分に行われていない.
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