これすぽんでんす
清水宏先生の御意見に対して
八田 尚人
1
1福井県立病院皮膚科
pp.1017
発行日 1991年11月1日
Published Date 1991/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412900495
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我々の症例報告に対する清水先生の御意見を拝見させて頂きました.近年GB 3抗原が致死型先天性表皮水疱症の患者皮膚に欠如または減少していることが明らかになり,出生前診断に利用されていることは先生のご指摘のとおりです.今回は,電顕的な観察で水疱周囲および無疹部においてヘミデスモソームに異常が認められなかった症例を経験しましたので,致死型先天性表皮水疱症のヘミデスモソーム異常には不均一性があることを中心に述べました.GB 3抗原については言及しませんでしたが,本抗原がlamina lucida,lamina densa,およびヘミデスモソームに伴って存在すること1),また致死型先天性表皮水疱症のすべての症例で完全に欠如しているわけではなく,単に減少している例があること2)を考え合わせると,今回報告したようなヘミデスモソームの異常が認められない症例におけるGB 3抗原の態度についてはさらに検討する必要があると思います.
次に出生前診断については,自験例では既に2子があり,次子の妊娠を希望しなかったためその話は具体化しませんでした.しかし,我々はこの症例の他に先天性幽門閉鎖症を合併した致死型先天性表皮水疱症の1例(投稿中)をほぼ同時期に経験しました.この例では患者が第1子であったことから,両親は本症の遺伝形式や患者の生まれる確率などを了承したうえで次子の妊娠を希望され,妊娠されました.その際に出生前診断のこともお話ししたのですが,本邦では未実施であったこともあり希望されず,妊娠を継続し出産されたようです.帰省出産のため連絡が途絶えてしまい,正常児かどうかも含めてその後の経過は残念ながら不明です.
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