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医学部を卒業して10年目にまた国家試験でもあったらぞっとする。自分の専門科なら何とかなるだろうが,他科となると30%も正解しないのではないか。新しい情報が次から次へとリアルタイムに飛び交う現代では,古いそしてあまり使わない知識はどんどん頭の中から追い出されてしまう。自分の専門分野は知識や経験が蓄積していきそれなりに目も肥えてくるが,他科の分野になると自信がない。それは他科のドクターも同じであろう。同じ眼底を眼科医が診るのと内科医が診るのとではかなり違うはずである。また,同じ眼科医どうしでもそれぞれ診かたが違うので思わぬ発見をすることがある。回診で鋭い指摘を先輩医師にされ,ドキッとした経験は誰にもあるだろう。人間は忘れるし,日々同じことをしていると視界が狭くなって物事を小さくしかみられないようになってしまう。新しい第三者の刺激や指摘が必要なのだ。本稿では筆者の経験を交えて眼科と他科との連携について考えてみたい。
いろいろ検査しても確定に至らないぶどう膜炎は多い。ぶどう膜炎は全身疾患の一症状として現われることがあり,眼症状以外の所見が診断の参考になる。特にベーチェット病,サルコイドーシスを疑うとき,皮膚科や内科的な診断は非常に重要だ。本人,あるいは診察した医師までも単なる虫刺されだと思っていた発疹が,皮膚科での診察や生検でぶどう膜炎に伴う立派な一症状と判明したりする。BHL(両側肺門部リンパ節腫脹)も典型的なものだったら眼科医でもわかるが,微妙なものはCTを含めた内科的な判定が必要だ。眼症状が非典型的だったりすると,特に他科の所見は診断や治療に大きな意味を持つようになる。筆者自身も眼科的精査と同時に他科依頼をし,眼科以外の意見を必ず聞くようにしている。
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