今月の本棚
—安井 信朗 著—「パパは生きている」
佐藤 進
1
1山形県立中央病院・脳神経外科
pp.235
発行日 1978年3月1日
Published Date 1978/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206485
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教訓と光明を与える闘病の記録
タイプを一字一字叩いて
この著書は,極めて特異な意識状態と神経症状を示すいわゆるLock-ed in syndrome(閉じこめ症候群)に突如として陥った著者が,本人の強靱な意志と家族の暖かい援助によって,わずかに動く上肢をbalanced forearm orthosisにのせ,電動タイプを一字一字叩いて書かれた感動の手記である.当初は数行が,調子のよい時で数頁が,1日の仕事量だったという.そのご苦労とご努力は想像を絶するものがある.
本書で,著者は発病以来の意識状態および神経症状の推移について述べているが,その詳細な記述はその正確さで驚くべきものがある.患者さん自身の記載という点で,またLocked in syndromeを内側からみつめた記録という点で,われわれ脳神経外科医,神経内科医,さらにはリハビリテーションに携わる者に,測りしれない多くの生きた教訓を与えてくれる書でもある.
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