医療への提言・16
医療と医療費
水野 肇
pp.73-76
発行日 1977年10月1日
Published Date 1977/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206362
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"人口の老齢化"が意味するもの
これから21世紀にかけての日本の福祉を考える場合,なんといっても大きな問題は,人口の老齢化である.これには2つの側面があって,ひとつは老人個々の医療や年金をどうするかという問題と,もうひとつは人口の老齢化が国の経済や社会に大きな変動をもたらすということである.それは,実際にはかなり深刻なものと思われるのだが,実感としてはあまり感じられないために,単なる計算上の遠い将来と受けとっている人が多い.これが危険なのである.
寿命が伸びたというのはまぎれもない事実である.昭和51年の平均寿命は,遂にスウェーデンを抜いて世界一になったようである.こういったことから人々は,みんなが長寿になったと思っている.しかし,実際は,長寿(いまの医学では85歳以上)の人の数がそうふえたわけではなく,一定の年齢(75歳以上80歳ごろまで)まで生きる人はふえたが,1人の人間が長寿になるようになったということではない.国全体が老人国になりはじめたということなのである.
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