看護婦長日誌
整形外科病棟
工藤 桂子
1
1国立療養所西多賀病院
pp.64
発行日 1977年4月1日
Published Date 1977/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206211
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せまいトイレの入口
1月○日
廊下で車椅子に乗ったKさんが,突然尿意をもよおしたらしく大声を発している.とっさに尿器を持って走って行き手伝ってやる.今回はやっとセーフであった.ほっとひと安心.彼も安心した様子で「あっちに行っててもいいから」と心配しながらついていた私を促した.日に数回も失敗されるので,ついそばについていて見届けるつもりでいたが,いわれてみればもっともな話である.
Kさんの失敗の原因はどこにあるのであろうか?車椅子の操作が余り上手でないこと.彼のような患者さんにも簡単に操作できる車椅子が病棟にないこと.また洋便器がひとつしかないことなどで自制のきかない彼はつい前をおさえることになってしまうのだろう.上記の他に何か障害となるものはないだろうか.最も障害となるもの,それはトイレの入口が狭いことではないだろうか.車椅子が入口と平行して真直ぐにならなければ,中には入れないのである.それほど入口が狭く操作の下手なKさんはちょっとの加減で手がはさまるし,出入りも自由にならず失敗してしまうのであろう.当病棟はもともと整形外科用ではなく,内科病棟であったため種々構造上の不便さが残っている.トイレの入口がせめてあと15cm広ければと思うと,1日に15-16回も利用する彼は本当に気の毒である.失敗をとがめることはできない.
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