中国の旅・6
偉大的宝庫
伊藤 誠
1
1千葉大建築学
pp.62-63
発行日 1977年4月1日
Published Date 1977/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206210
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街路樹
5月下旬の上海はそろそろ蒸暑い.しかしホテルから病院へ行く途中の車窓に映える緑はいかにも清々しく,何やら心洗われる思いがする.並木が立派なのはこの街だけではない,"解放前は街路樹が僅か何千本しかなかったが,現在は何十万本ある"といった説明を,いくつかの都市で一再ならず聞かされた.事実,どの街どの村へ行っても本当によく植樹されまたよく手入れされている.解放後に植えたといっても,鄭州や南京あたりのように気候のよい所へ来ると,それは既にかなりの大木になっているから,そこを通るのはあたかも緑のトンネルを行く感じである.これだけ広大な国土が一気に緑化されるとは,さすがと言わざるを得ない.
大体北京あたりではちょっとした空地にも雑草が生えていない.もともと生えないのである.気象統計を見ても,夏の間だけは少しは雨も降るようだが,10月から翌年5月にかけては月せいぜい数ミリ程度の降雨量でほとんどまったく降らないといってもよい.このような土地に緑豊かな並木をつくることの困難さは想像に余りある.恐らく大変な人手がかかっているのだろう.
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