特集 病院と麻酔科
病院麻酔科の展望
山下 九三夫
1
1国立病院医療センター,麻酔科
pp.26-30
発行日 1975年10月1日
Published Date 1975/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205723
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いとぐち
麻酔科の歴史は,わが国では極めて浅い.私の記憶では,昭和26年に,外科学会会長前田和三郎教授が「麻酔の発達は喫緊の要がある」という主旨の会長演説をした後に,アメリカのハイドブリンクの麻酔器が壇上に供覧された.昭和27年には,わが国最初の麻酔学講座が東京大学に開設され,山村秀夫教授がその任務に当った.昭和33年には,東京でも麻酔を専門とする者が漸増し,その10月24日「7人の侍」と称して,山本亨氏ほか7名が,麻酔科の独立はどうしたらできるか,麻酔を専門とする者はどうしたら増えるか,またその会をどうやって作るか,などを議題に第1回会合を開いたという記録がある.
当時は,46の大学のうち1/3程度しか麻酔学の講座はなく,各大学で十分麻酔学を教育することができないことや,医師国家試験さえ合格すれば,他の科と同様に麻酔科を標榜広告することは国民医療上危険であるとか,麻酔を一般標榜にすると国会承認の厄介な手続が必要であり,その認可に手間がかかるなどを理由に,医療法第70条第1項の3を適用して,厚生大臣の認可による通称麻酔科標榜医という特殊な制度が生まれた(昭和35年3月).各大学にほとんど麻酔学講座の開設された今日でも,各専門科の中の麻酔科のみはこの制度を踏襲し,昭和50年9月現在3,800名が認可されている.
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