今日の精神医療・18
国立精神療養所の現状と将来
秋元 波留夫
1
1国立武蔵療養所
pp.54-68
発行日 1974年6月1日
Published Date 1974/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205373
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はじめに
国立精神療養所は厚生省が所管する国立医療機関の一部である国立療養所に所属している.厚生省が直轄する医療機関は国立病院と国立療養所とに分かれていて,同じ医療機関でありながら,行政の仕組みを異にし,前者は国立病院課,後者は国立療養所課の所管するところとなっている.この区別は,国立病院と国立療養所がそれぞれ出生を異にするという歴史的事情に基づいているだけで,格別の理由があるわけではない.強いて両者の差異をあげれば国立病院は臨床各科全般にわたる総合医療機関であるのに対して,国立療養所は単科の専門医療機関として特徴づけられるということだろう.しかし,これから述べるように,この差異は医療の発展とともに急速に不分明になっており,結核療養所の変貌に具体化されているように,国立療養所の医療活動が多様化しつつある一方,国立病院は総合機能とともに,がんセンターや循環器センターの構想に示されるような専門化が進行している.国立病院の昭和49年度運営方針にも‘国立病院は地域における一般医療を担当するほか,病院ごとに位置づけられている特殊診療機能(癌,循環器,胃,難病,小児等)を更に強化推進することとする’とうたわれている(昭和49年度国立病院会議資料から).このように国立病院と国立療養所は実態的には同質化の方向を歩んでおり,両者を区別する根拠は薄弱になっている.
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