医療提供システム論入門
1.医療の多面性
紀伊国 献三
1
1病院管理研究所
pp.76
発行日 1974年2月1日
Published Date 1974/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205278
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連載にあたって
現代の社会問題のうちおそらく医療の問題ほど解決の困難な問題も少ないのではないか.わが国のみならず社会体制の如何を問わず,進歩する医学の成果を実際の社会に適用する医療に問題を持たない国はほとんど存在していない.これは医療が過去の特権であった時代から,今日生活のもっとも基本的な権利として認められてきたことによるものであろう.
医学を中心とする関連諸科学のめざましい進歩にかかわらず,その提供の組織,方法についての検討はたんにその不完全さを指摘するにのみ熱心であり,科学的な検討はほとんどなされず,経験による直観が支配していたといえる.この医療提供のしくみにも科学的検討の必要性と可能性のあることは,しかししだいに指摘されはじめている.しばらくのあいだ,この検討が世界的にどのようになされているのか,傾向を探ってみることにしよう.
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