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はじめに
グリニド薬(Tips 1)は,膵β細胞の細胞膜KATPチャネルを形成するスルホニル尿素(SU)薬受容体(SUR1)に結合することでKATPチャネルを閉鎖し,膵β細胞の脱分極を惹起する.その結果,細胞内にCaイオンが流入し,このCaイオンにより膵β細胞内のインスリン分泌顆粒よりインスリンが放出され,血糖降下作用を発現する.SU受容体にはBox 1に示すようにSU基結合部位とベンズアミド基結合部位がある.Box 2に示すように3種のグリニド薬はベンズアミド基ないしはベンズアミド基類似構造を有することより,ベンズアミド基結合部位に結合する可能性が考えられるが,SUR1への結合部位は3剤で異なるとの報告がある.グリニド薬は服用後速やかに吸収されSU受容体に結合するが,結合後の解離が早くインスリン分泌刺激作用は短時間で消失する.このため,食事に合わせたタイミングの良いインスリン分泌を起こすには,食直前(食事の5~10分前)に服用する必要がある.SUR1に結合することで膵β細胞内ではSU薬とほぼ共通のメカニズムを介してインスリン分泌を惹起するが,グリニド薬刺激により生ずるインスリン分泌は短時間でパルス状である.このことよりSU薬とは異なるpleiotropic effects(付加的作用,Tips 2)を2型糖尿病患者に起こす可能性が考えられ,ここに注目し脂質代謝や動脈硬化への影響をみた研究が多数ある.また,ベンズアミド基結合部位は心筋・骨格筋細胞や平滑筋細胞に存在するSU受容体(SUR2A,SUR2B)にもあり,これらの細胞へ直接作用する可能性もあるが,これら細胞のSU受容体への結合親和性は低く,その可能性は少ないと考える.現在,Box 2およびBox 3に示す3種類のグリニド薬が日本では利用できるが,そのSUR1への親和性の違いなどにより1回使用量やインスリン分泌刺激作用に違いが生ずるし,付加的作用にも違いが生ずる可能性はある.
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