病院建築・56
茅ケ崎市立病院の設計
鈴木 昭
1
1株式会社東建築設計事務所
pp.93-100
発行日 1973年9月1日
Published Date 1973/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205113
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はじめに
1972年度神奈川県建築コンクールにおいて,茅ケ崎市立病院は他の一般建築にまじり優秀建築3点のうちの1つに入賞した.このことは私ども病院建築の設計に従事する者にとって初めての喜びであった.当然,福祉の年ともいわれ国をあげて国民生活の向上に関心が寄せられている風潮によることも大きいが,病院建築が一般建築とならんで社会的興味の対象として取りあげられたことは,これからの病院建築に対して新しい方向を示すものと考えられる.
今日まで,とかく病院設計という仕事は特殊な分野での専門的作業であって,その難しさは理解されても,あるいは,医療的方法のなかでの良否は問題にされても,いろいろな建築が人間社会と織り成す愉しさや環境造りの主役を務めていることに比べるときわめて地味な存在であった.病院は患者にとっては闘病生活の場であり,医療従事者にとっては職場以外の何ものでもない.昨日まで千差万別の市民生活を送ってきた市民が,患者という一律的な呼び名のもとで共同生活を営み,一方,数十種類におよぶ何らかの資格を持った医療従事者が,それぞれの立場から協調と献身的努力を日夜重ねる職場としての病院建築は,他のいかなる建物にも増してヒューマニズムによって貫かれ,常に深い関心を持たれる建物であらねばならない.
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