病院の広場
医学教育とひとつの方向
吉田 尚美
1
1四日市築港病院
pp.17
発行日 1968年9月1日
Published Date 1968/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203426
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風爽かな今日この頃である。窓の外いっぱいにひろがった鮮かな緑,その上に点々と映える赤いつるバラの輝き,新鮮な大気と豊かな土壌に恵まれての景観ということができるであろう。
自然はたしかに美しい。しかし一度人間の社会にふみこんでみると,まことに難しいやっかいなことばかりである。ことに現在の病院の社会には,いろいろ問題が多い。私も15年間病院管理にあたってつぶさに辛酸をなめてきた。大きい障壁にぶつかるごとに,"世の中というものは,そう悪くゆがんでいくものではない。そのうちにはきっと正常な姿に戻ってくるものだ"という淡い希望にささえられて,ひたすらにつきすすんできたのが私どもの今日までの姿といえるであろう。なるほど経営が苦しくなってきたと思う時には,多少診療点数の値上げが行なわれる。設備が老朽化してどうにもならんと思う時には改築のメドも出てくる。従業員が不足してきたと思っていると何時の間にか間に合ってくるという具合に,たしかに世の中のことは極端にはゆがんでこない。しかし,物的資源や人間の不足といった問題はまだしもであるが,こと人間の資質といった問題になると容易に改変できないものだけに,ことによっては病院に大きい影をなげかけていく危惧がないとはいえないであろう。
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