病院図書館
—浅賀ふさ 監修—「医療社会事業事例集」
中重 喜代子
1
1杉並西保健所
pp.32
発行日 1967年7月1日
Published Date 1967/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203127
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患者を人間としてみる
この本は,第1部と第2部からなり,第1部にはわが国の医療社会事業の歴史と,内外の同事業の実際が浮きぼりにされている。限られた面でしか接していない私は,まずこの事業の広さと深さをあらためて認識した。たとえば脊髄損傷者のリハビリテーション過程で,あるいはハンセン病院において,また,死を目前にした患者に対した時の,それである。そこに人が生活していたから,そしてそこに障害や悩みがあったから,と言われればあまりに当然のことであるけれども……。この事業が医療ティームの中で大そう重要な役割を占めているものであり,その活動は,場合によっては保健婦活動と非常に近いものであるということも知ることができた。
第2部には実際の業務にたずさわっている医療ソーシャルワーカーの方の事例16例が収められている。生きた記録は不思議なほど大きな力をもつ。たとえば重症の身障者が,絶望の中からどのようにして生きる力を,さらに社会に復帰しようという意欲を自分自身でかちとることができたか,そこには医療ティームのどんな支援がなされたかなど,私達にいくつかの示唆を与えてくれる。これはリハビリテーション関係の書物にもあまり書いてない。医学書を基礎とした教育を受けることが多かった私達にとって,あるいは看護教育の場においてこのような事例集のはたす役割は大きいと思う。
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