特集 総合病院における精神医療
内科と精神神経科
千葉 保之
1
,
春原 千秋
2
1中央鉄道病院
2中央鉄道病院神経科
pp.27-31
発行日 1965年8月1日
Published Date 1965/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202638
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はじめに
わが国においては,戦前には大学病院以外で精神神経科(神経科または精神科)が設けられていた総合病院は,2,3の国立病院をのぞくとほとんどみられなかった。その理由はいろいろあろうが何よりもまず第1に,一般の人々の精神医学に対する理解と認識の低さがあげられよう。すなわち精神神経科といえば,精神病患者,つまり狂人をとりあつかう特殊な診療科目であるという思想である。したがって,医学教育の機関である大学病院では必要上やむをえないとしても,それ以外の一般病院にとっては,まったく無縁の診療科目と考えられていたわけである。
しかしながら,精神医学が特殊な学科として好奇的な眼をもってみられた時代はもう過ぎ去った。とくにこの十数年間における数々の向精神薬の出現は,精神疾患に対するとりあつかいや治療にいちじるしい進歩を示すとともに,他方,戦後のアメリカ精神医学の導入にともなう精神身体医学の提唱などの影響もあり,精神医学と臨床各科との関連性の深さについて,正しい理解と認識がなされるようになった。そしていまや,全国の総合病院では,その必要性を認め,つぎつぎと精神神経科が併設される気運となりつつある。
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