特集 総合病院における精神医療
精神医療のうごき
鈴木 淳
1
1病院管理研究所・下総療養所
pp.15-21
発行日 1965年8月1日
Published Date 1965/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202636
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大きな流れ
哲学,社会学,心理学などの精神医学隣接諸科学は,今世紀になって,ようやく"人間存在"を追究し始め,それまで世間の片隅にうち捨てられていた,いわゆる狂人にも"人間理解"の眼が注がれるようになった。その結果,鉄格子のかなたにおしこめられていた精神病院入院者の処遇や,退院後の復帰能力がしろうとの識者の話題にのぼった。
2回にわたる大戦は,国内や国家間の新旧勢力の交替,住民所得の平均化を招き,生活テンポの高速化と生活様式の変化は,情緒の不安定や心的緊張の高揚をひきおこし,社会の複雑多岐化は適応をますます困難にしている。これらの影響で,潜在精神障害者の顕化,行動異常者の増加,社会不適応者のひん出となり,健康者も生活基盤のもろさから,より確実なwell-beingをのぞみ,精神科学に人々は多きを求め,精神分析は流行し,精神衛生は日常語となった。
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