特集 看護婦不足の現状と対策
女子労働者としての看護婦
吉田 秀夫
1
1法政大学
pp.12-15
発行日 1964年9月1日
Published Date 1964/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202414
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看護婦は労働者であるということ
いまから3年まえといえば,いわゆる安保条約で,東京を中心に全国いたるところで大へんなさわぎがあった年である。その年の春より翌年にかけて2年ごし,わが国の歴史では稀有にぞくするという病院ストライキが,全国各地で激発していた。その年の秋,私はラジオの放送のゲストによばれて,労働省のO女史という課長さんと30分間「看護婦の現状について」ということで,話をさせられたことがあった。そのときO女史は,私にこういっておられた。これまで,しばしば厚生省や実質的に厚生省が応援している看護婦の集いで話をたのまれてでかけてゆくと,"看護婦は労働者である"といったことはあまりいってくれるなという先制的注文をうけてきたと。こうした,あやまった考え方が,戦後一貫して厚生省の人たちにあったのではないだろうかと。私も同感の意を表明した。これこそ病院ストライキを2年ごし全国的に多発せしめた理由の重大な一つではなかったかと思うからである。
医療行政を指導する役所が,こういう考え方ならば,病院を経営する人が医師であろうと非医師の団体であろうと,それは公私をとわず前近代的だと批判されてもいたし方ないものが根づよく,長期に存在していたはずである。だからこそ,あの当時マスコミでさえも日本の病院経営は第二近江絹糸ではないかとさえ酷評し,その非近代的労務管理政策の正体をついた。
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