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看護,他
pp.225-229
発行日 1960年3月1日
Published Date 1960/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201636
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看護婦にできる病院の緑化
緑の木蔭に三々五々屋根をみせている療養所は日本にも多いですが,病院となるとせいぜい周囲にめぐらした塀の内側に兵隊さんのように立木が一列に並んでいる位。それでも,戦前には,中庭をもつていた病院もあり,築山や池を眺めることの出来る病室だつてあつたことを思いますと,戦後の鉄筋コンクリート建のビル病院が土地のせまさから,又は土一升金一升のせち辛さから,何のゆとりもない,余りにも合理主義すぎる施設になりかけてきていることを残念に思います。歩行訓練の出来るようになつた患者さん達も,散歩を許された患者さん達も,せいぜい屋上にあがつて味気ないコンクリートの上をそぞろ歩き,電線や電車の走るのを見降し,はるかに僅かみえかくれする並木をみる位のたのしみしかないあわれさ,気分の転換も,精神的やすらぎもこれでは注文する方が無理というものです。大きな広い庭がなくても,向う側の家がみえない程の立木が植えてなくても,病院の緑化は考えられるのではないでしようか。ひさしのおしつぶされたように傾いた軒の並んでいる裏街の窓辺にも,又そのゆがんだひさしの上にでも,小さな植木鉢に花がさいていたり,オモトが植つていたり,朝顔の鉢が並んでいたりすることで,花を愛し自然を愛する国民として,日本人は外国にも紹介されているんですのに,その同じ日本人の働く職場には,その思いが通じていないのはどうしたことでしよう?
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