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インドで見たこと
金子 光
1
1厚生省
pp.375-378
発行日 1959年5月1日
Published Date 1959/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201512
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定床をはるかに越えた国立病院
国立病院は入院治療費は一切国費でまかなつているので,常におし合いへし合いの大盛況を呈しています。ニユーデリーの飛行場の近くにある町はずれの国立病院が,デリー大学看護学校の学生の臨床実習病院になつているので見学に出かけました。
建物は戦時中の兵舎であつたという粗末な木造のバラックで,長い渡り廊下(屋根つき)の片側に,いくつもの腕のように病棟が並んでいます。病棟の間は3間位の空地になつていて,木も植えてありません。病棟の窓はいずれも暑さ除けのヨシズのスダレが下つていて,内部は暗い。訪れた時は11月の20日すぎですから,冬になつているので特にスダレの必要はないのだそうですが,とりはずす手間を惜しんでいるものらしいです。渡り廊下の他の側は荒れはてた広い芝生の庭で,見舞客や家族や,外来の患者などが,多勢座つたり,しやべつたり,横になつたりして時間をまつている様子でしたが,どの人が病人で,どの人が健康な見舞客か区別がつかない程,どの人もやせて,不健康そうな顔色で,生気のないようにみえる人達ばかりでした。病院に関する一般的な説明があるでもなく,直ちに案内をしてくれるものらしいので,歩きながら時々質問することで我慢をしなくてはなりませんでした。
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