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新生児室と私—特集「入院分娩」に寄せて 新生児室開設前後の「広尾病院」だけの世界の話
原 素行
1
1前都立広尾病院
pp.15-18
発行日 1958年1月1日
Published Date 1958/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201308
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I.病院管理者の立場
筆者は内科医である。それが病院長になつて,病院管理の責務を負う立場になれば診療管理に身を入れて,診療水準の向上に努めることは当然である。従つて,内科医の院長は新生児室に関しても,「おれには興味がない」とは云えない筈である。然し,内科医の院長には,新生児室の難問題はいくら勉強したつもりでも,やはり所詮耳学問程度の付け焼刃であるから,所信を述べるわけにはいかない。ここでは所信ではなく,実在した話を簡単な記録として,お目にかけたい。
新生児室には,幾多の意見も,また厳しい批判もあることは申すに及ばないところであるが,先ず第一に,新生児室が欧米に於ては最早や旧時代のものとして顧られぬということを批判のための批判とすることが,時たま目についた。欧米の風潮に左右されて礼讃となつたり,懐疑的と化したりする底の浅さが悲しい。筆者はこう思う。種々な因子を含む問題は簡単に割り切り得ないものである。歴史は繰り返されるというが,その間に必ず進歩が伴つている。その一コマを担当するのがわれわれの責任であろう。
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