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病院救急部と交通事故傷害
原 素行
1
1病院管理研修所
pp.639-648
発行日 1957年10月1日
Published Date 1957/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201273
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まえがき
1.病院救急部の性格
病院救急部は病院が公共機能を発揮するために必要なる諸機関の一つとして,重要視されていることは云うまでもない。救急業務と社会との関係を,都市問題の観点から考察すれば,病院救急部は特殊なる性格を帯びているように思われる。
元来病院は社会機構の搏動と共に,またその呼吸と共に,生き,且つ生長して来たため,その各種機能に対する比重には変遷があつたとしても,社会との関係は固い絆で結ばれて現在に至つた。社会の近代化と,学問の実践上の進歩は,この頃病院自身をして,近代病院思想乃至近代病院医療の思想を打ち建てる方向に向わせている。病院救急部の性格としてここに少しく云いたいことは,このような基本的問題から離れて,単にこれを都市行政当局の深い認識の下に運用されねばならぬという要望についてである。即ち,救急部が病院長の管理下にあることは当然なことではあるが,この運営上の責任を全く病院に委せて,都市当局がこの責任の一端を負つていないことの可否を再検討したい。端的にいうと,救急患者の医療は診療報酬による請負制のような見方になつているらしい。ここにこの業務に対する認識不足となり,この施設を完備する救急病院が非常に少く,近代社会の問題として考えさせられることになる。これを都市の責任として再認識することを望んで止まない。殊に交通事故傷害の増加は,必ずや近い将来都市の責任問題となることを予言しておきたい。
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