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Doctors' Taperecord
pp.63-64
発行日 1955年11月1日
Published Date 1955/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201031
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見知らぬ人でなく
表題の映画の試写をみた。これはDr. MortonThompsonのベストセラー小説"Not as a stranger"の映画化であつて,このアメリカ映画が我が国の一般大衆にどの程度アツピールするか分らないが,医療関係者にとつては多くの興味ある話題を提供してくれる内容をもつている。2時間半に垂んとする長時間を殆んど飽かせないのは,アメリカ映画のテンポの早さだけではなさそうだ。勿論フイクシヨンであるからには或程度の誇張といつたものは免れないが,アメリカの医学生や医師の生態をかなりよく描写している。ここに描かれた医学生生活は我が国の実態からみると多分に現実ばなれした感じがなくはないが,これはむしろかなり正直な描写といつてよいであろう。教授が学生に呼びかける「ジエントルマン!」ということばが示している様に,アメリカでは医学課程はポストグラジユエイトであるから,医学生は既に一人前の紳士,即ち社会人として取扱われ,その様な生活態度が許されてもいる。医学生と看護婦との関係もそうした現実の上に理解さるべきであろう。この映画は究極に於て,医学のヒユーマニズムの昂揚を謳つているのであるが,一方今日のアメリカ医学のあり方,医師のあり方に対する痛烈な諷刺も含んでいる。
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