--------------------
ベツトから見た病院の種々相
千種 峯藏
1
1関東信越医務出張所
pp.15-19
発行日 1955年5月1日
Published Date 1955/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200952
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
私は前に「病院のよく見える窓」という短文を書いた。「病院のよく見える窓」とは言い換えれば,「患者に開かれた窓」という意味である。病院は1つの組織体であるから,その構成員が,それぞれの担当を,忠実に守ることによつて,組織全体の運営が成り立つのは当然のことである。しかし又その為めに,長期反復する自分の業務に,慣れつこになつたり,機械的となつたり,マンネリズムに陥つたりすることも出て来るわけである。業務上の習慣は,有難いものであると同時に恐ろしいものである。有難いということは,能率の上る点であり,恐ろしいということは,機械的になり,無反省になるという点である。
長年の経験によつて,業務の軌道の上を,スムースに前進しつつあると思つている人には,そこに問題を意識したり,検討の必要を感じたりする筈がない。処が,全く違つた立場から眺めると,スムースな前進と思われている処にも,不合理なことや,不可解なことの介在が,目につくものである。所謂「岡目八目」というものであろう。私の言う「病院のよく見える窓」というのも,つまりは,この岡目八目に外ならない。只私の場合は,患者というだけでなく,病院管理の関係者というところに,特有な立場があると言えば言えるのである。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.