メディカルエッセイ
2008年のノーベル賞
白木 良一
1
1藤田保健衛生大学医学部腎泌尿器外科学
pp.94
発行日 2009年4月5日
Published Date 2009/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101699
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連日,新聞をにぎわしているのは,アメリカのサブプライム・ローンに端を発した世界同時不況,株価の暴落,といった経済の暗いニュースばかり。そんな中,「ノーベル物理学賞を日本の3人が受賞!」に続き,ノーベル化学賞も日本人が受賞し,まさに“ノーベル賞ラッシュ!!”の明るいニュースであった。化学賞を受賞した下村 脩・米ボストン大名誉教授の研究は,緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見である。GFPは,ターゲットとなる分子,蛋白に組み込み発光させることで,それらを生態内などで直接観察することが可能となる。タンパク質を光らせる『分子イメージング』に役立つ研究を地道に重ねた。今回同時にノーベル賞を受賞したマーティン・チャルフィー氏らが,GFP遺伝子を別の遺伝子と連動させることで,生体内でいつ,どの遺伝子が働いているかを把握する標識に使えることを示した。見えない現象を見えるようにすることで,新たな理論を生み出したり,病気の解明が進んだりしている。
細胞レベルでは癌細胞がどのように広がるかなど,これまで見ることができなかった現象を追跡する手法が開発された。GFPを作り出す遺伝子を調べたい細胞のDNAに組み込むと,細胞内で光を放つタンパク質が作られる。この光を「標識」にすれば,細胞を生かしたままタンパク質や細胞の働きを観察できる。実際,私たちの研究室でも,腎細胞癌に対する治療用抗体にGFPを標識することで,マウスに移植したヒト腎細胞癌に標識した抗体が分布することを証明した。
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