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病院管理と血液銀行
福武 勝博
1
1東京医大血液学教室
pp.5-9
発行日 1953年3月1日
Published Date 1953/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200611
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輪血と病院管理
綜合病院が医療について独立した完全な姿でなければならないのは当然な話であるが,ふりかえつて輸血について現在の日本の病院の機構をうかがうと,病院は何らの完成された輸血施設もなく,多くの場合に輸血協会を通じて供血者を迎えなくてはならない。しかも,輸血協会との連絡は病院の施設を通じてゞはなく,病棟や手術室の看護婦個人を通じて連絡されていることが多い。この場合,問題となつて来るのは①輸血協会なるものは単なる自由営業であつて,法的に何等の取締りが行われていないことゝ②病院に輸血協会との連絡をなし,かつ供血者の選定などに関する責任ある機構が完備されていないと云うことである。
多くの輸血協会と称するものの運営が非良心的であるのは衆知のことであつて,病院より指定された血液型を供給できない時に万能供血者としてのO型供血者を他型といつわつて供給したり,供血者が持参する検査証明書に,血色素量が70%(ザーリー)以上と書いてあるのに実際に病院で測定してみると殆どが30%台であるなどの事実が認められている。このように職業的供血者が著しい貧血の状態におかれていることは供血者の健康保持にたいして寒心にたえない。しかも,輸血協会の運営が自由営業のまゝ放置されていて,輸血のような医療の重要な一面に直接につながる事業にたいして何等の法的監督が行われずにいることは医療行政における欠点であるとおもえる。
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