Japanese
English
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ユウサナシア
Euthanasia (Eu+Thanatos GK=Happy death)
宮川 米次
pp.81-86
発行日 1952年6月1日
Published Date 1952/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200496
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安樂死の昔語り
獨逸では安樂死のことはSchöner Tod, Ster-behilfe等と呼んでおり,英語で大低ユーサネートというておる樣だ。我が國では安樂死というのが一般的である。安樂死は洋の東西を問はず,かなり昔から廣く行われていたもののようであるし,そして常に食糧事情や經濟關係が深い關連をもち,しばしばここに急迫をつげると,終に不要のものは,片付けるというような隠慘なことが起つたようである。徳川時代に間引きが旺んに行われたのも,原因は全くここにあつた。かくして家族の數を調節し,己れらの食生活,經濟問題に苦難の起らんことを未然に防がんとしたのであつたことは申すまでもない。
その昔,信州で實際行われていたか否かは知らないが,彼のお婆捨山の故事などの話をきくと,首肯する節が少からずあるのである。それがあらぬか昨年は,足腰のたたぬ老婆を山に放棄せんとした不倫なものがあつたり,もつと烈しいのになると,手にかけて殺害した人非人もあつたことなどを思うと,この種のことが,決して昔語りの餘故事に思つては居られない氣がする。なんというても食生活の窮迫こそ,極めて切實であり,悲慘であり,實に友食いのような冥加のつきたことは,動物社會にのみ見ることだと思うてはいられないようなことが,この六・七年の間に,我等の社會で,目のあたり體驗してきた。
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