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冬の脅威,流感か感冒か異型肺炎か
宮川 米次
pp.114-118
発行日 1950年2月15日
Published Date 1950/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200586
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私のすきな明るい夏も過ぎ,柿の實が赤くなつて來て,我等の同業者は青くなつておるが,やがてあの陰慘な冬將軍が襲いかかつてくる。それは決して寒冷という不快な敵だけではない。色々なお伴がついてくるが,青くなつたやからも,息をふきかへしてくるのだと昔からいわれたものだ。それだのに籔井竹庵居士を風ひき醫者といつてさげすんで居るのにはうけとれないことが澤山ある。御醫者さん自身でさえもこの點を充分にわきまえて居られないような氣がしないでもないから,シーズンを前にし禿筆を架してみる氣になつた。それは何故であろうか?
如何に臨牀の大衆が多くも病者を1診して,流感か感冐か異型肺炎かを斷定し得る人はあるまい。チフス性病者をみて,チフスと斷ずるには,屡々あまり六ケ敷くないことがあるが,それが腸チフスかパラチフスA,B,Cの何れかといわれると,血清菌學的檢査をせずに診定したとしたならば,輕卒のそしりを免れないと同様に,感冐性の病者に於ても,それが流感か感冐か,況んや異型肺炎かを斷定するには,やはり細かな細菌血清學の檢査の結果にまたなければ出來ないというのが正しいゆき方だと思う。かぜ引の診斷がらくにつかないといつて,直ちに竹庵なりと決して笑うわけにはゆかないのが現状である。それ程に今日感冐學は進んで居る。所謂感冐の種類は何程あるか。
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