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病院と管理(その17)—病院医師は如何にあるべきか——その4
吉田 幸雄
1,2
1厚生省医務局医務課
2病院管理研修所
pp.6-10
発行日 1950年12月1日
Published Date 1950/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200239
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(36)病院医師の分類
日本においては,病院のなりたちが官僚的な独逸式を基盤としているから,一般に病院の医師は専属医師のみで,その職階が明であり,医長(科長又は部長),医局長,医院,更に修練中の副手を加えた型が大部分である。従つてその縦の責任の権限の限界は一応判然としているようである。この組織は独裁的傾向を持つものであるから,命令系統は明であつて,人を得ればその責任感によつて整然たる診療が行われ易い利益を持つ反面,人を得なかつた場合には,独裁主義の大きな弊害を蔵しているものである。最近民主々義の思潮により,良心的な医長はこゝに悩みを持つようになつて来ている傾向が現れ,そして,時には部下の意向に左右をされ,診療の命令権即ち医長としての権限と責任を放棄せんとするものさえあることは由々しい問題であると思う。
即ち,この民主々義的良心の発動は当然としても,医長としての責任と権限の地位に自信がないならば,宜敷くその地位を下るのが民主々義的責任を果すというべきではないだろうか。かくの如き状態であるということは,単に人の良心のみに発生する問題であろうか。新しく民主々義の国是が立てられた今日,今尚独裁的制度に近いわが国の病院医師の制度というものに矛盾がある為ではなかろうかと思う。
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