連載 リレーエッセイ 医療の現場から
天命
宮阪 英
1
1医療法人紫苑会 藤井病院 診療部
pp.897
発行日 2014年11月1日
Published Date 2014/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200040
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最近,よく考えることがある.人には天から与えられた役割,いわゆる天命があるのではないかということである.すべてはこの記録をたどる,とされる「アカシックレコード」を盲信するわけではないが,行っていることが天命だと気付くと,それはさらなる意味を持つと思う.明治〜大正時代の思想家,内村鑑三の言葉に「人生の成功とは自分の天職を知って,之を実行することである」という名言があるが,まさにそのとおりであると感じる.これは医療の世界でも一緒だと思う.大学病院をはじめ大病院の医師は,最先端の技術を提供し,そのために日々努力する.地域の開業医は,地域住民の悩みに答え,健康維持に邁進する.どのような立場であれ,漠然とでも自分の天命を理解している人は,力強く,輝いて見える.
私は,医師になってからの8年間をいわゆるジェネラリストとして従事してきた.救急医および総合診療医としての8年間を過ごした京都・宇治徳洲会病院の救命救急センターでは,1次から3次までの救急に幅広く対応し,内科救急だけでなく小児科救急や外傷などの初期診療にも携わってきた.総合診療医としては,ほぼ全ての内科疾患の入院を診ていた.なので,幅広く何でも診ることには自信があった.良く言えば「幅広く診る」という得意技を持ったスペシャリストであった(なお,私と違って幅広くだけでなく専門医を凌駕するほど深く診ることができる総合診療医も存在する).
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