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要旨●地域看護師が2006年に起業したオランダの在宅ケア組織ビュートゾルフ財団では,2014年現在,九州ほどの広さのオランダ全土で約750チーム,地域ナース(看護師・介護士・リハ職ら)約8,000人が活躍している(利用者約6万人).全国で最も高い利用者満足度と従業員満足度を他の在宅ケア組織の約半分のコストで実現して急成長,オランダのケア関連政策に大きな影響を及ぼし,世界的に統合ケアのモデル等として関心を集めている.
「よりよいケアをより安く」は,専門性の高いナースらが,フラットな自律型チームで利用者と利用者の持つネットワークと協働して「最良の解決策」を見出していることによる.ナースがともに開発したICT(ビュートゾルフウェブ)がこれを支える.
ビュートゾルフウェブは,①チームにおける業務管理(利用者情報,文書共有,従業員データ・勤務時間登録・シフト管理,バックオフィスとのコミュニケーション),②知識創造の“ba”(事例やイノベーション等を含むナースのナレッジの共有・議論),③チームの生産性の「見える化」(チームコンパス),④ケアの「見える化」4つの機能を持つ.
機能別出来高払いの報酬体系は,利用者を中心に利用者とナースの関係性を基盤としてエビデンスに基づくケアを目指すビュートゾルフの理念と合わず,また無駄な事務処理を発生させる.④ケアの「見える化」は,地域に根ざす統合ケアを推進し,日々のケアの質を高めるとともに,ビュートゾルフのケア提供モデルが効果的で効率的なケアの実現,ひいては国としての制度の持続可能性に貢献することを証明すること,すなわち現状の官僚主義的な制度体系に対応するのではなく,アカウンタビリティを高め,システムをよりよいものに移行させていくことも意図して行われている.
具体的には,国際標準,全人的見地に立ち,ケアマネジメントサイクルを通じて利用できることを考慮して,1970年代に米国で開発された地域看護活動の標準分類方式であるオマハシステム(利用者のみならず家族やコミュニティを視野に入れた看護診断→介入分類→アウトカム評定からなる体系)を採用,アセスメント,目標設定,ケアプラン作成,モニタリングを実施している.
オマハシステムを活用した品質管理は日常の実践の向上のみならず,ビッグデータの分析を通じたよりエビデンスに基づくケアの研究,患者属性ごとのアウトカムに関する知見の共有も可能にする.近年ではオランダ全土で,オマハシステムの活用が質の高いケア提供を示す指標のひとつと認識されるようになるなど,専門職に対する信頼,アウトカムに基づく支払いに向けた政策的インパクトにもつながった.
ビュートゾルフウェブは,利用者・家族との対話,家庭医や病院との情報共有といった多職種協働の推進等の観点から,さらに進化しようとしている.
※ビュートゾルフについての詳細は,医学書院『訪問看護と介護』2014年6月号の特集を参照されたい.
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