特集 医療と経済格差
巻頭言
広井 良典
1
1千葉大学法経学部
pp.613
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102051
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「格差問題」が様々な形で活発に論じられるようになっていることは言うまでもない.日本において経済格差は本当に広がっているのかという事実認識や,そもそも格差というものをどう評価するかという価値判断を含め,今後もさらに様々な議論が展開していくと思われる.
こうした中で,医療における格差問題が急速にクローズアップされるようになっている.戦後の日本の医療政策においては,国民皆保険をベースとする「アクセスの平等」が基本的な理念として存在したため,近年に至るまで「医療における格差問題」が論じられる余地は少なかった.ところが,上記のような日本社会それ自体の中での経済格差拡大という点に加えて,近年進められている医療改革(患者自己負担の引き上げ,混合診療の拡大等) の帰結としても,医療における格差というテーマが現在大きく浮上するに至っている.近藤克則氏の著作『健康格差社会』もこうした状況に一石を投じるものであった.
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