特集 補完代替医療のこれから
巻頭言
広井 良典
1
1千葉大学法経学部
pp.897
発行日 2009年11月1日
Published Date 2009/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101566
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本誌『病院』において,補完代替医療に関する特集を行うのは,2004年5月号(63巻5号)に次いで2度目である.基本的には,様々な慢性疾患やストレスなど心理的・社会的な要因と深く関連する「現代の病(やまい)」への対応として,“要素還元主義”的な発想をベースとする西欧近代科学の視点のみではなく,より広い視野に立った病気観や医療のあり方が求められるようになっていることが特集の背景にあるが,最近では,補完代替医療に関する具体的な展開として次のような動きも見られる.
1つには,(遅ればせながらという面もあるが)厚生労働省もこうした補完代替医療に関する対応に一定の関心を見せるようになり,厚生労働科学研究費の医療安全・医療技術評価総合研究事業において,「統合医療に関する研究」という項目を新設し(2006年度),「西洋医学に含まれない医療領域である相補・代替医療に該当する漢方,あん摩マッサージ,はり,きゅう等のほか,食事療法,カイロプラクティック等及びヨガ・精神療法等を現代西洋医療と効果的に組み合わせた医療」を「統合医療」とし,内外における統合医療の現状調査や,統合医療の開発研究ということを調査研究課題として位置づけたという動きがある.先ほど「遅ればせながら」と記したのは,実は中国・韓国など他のアジア諸国や,アメリカ,ヨーロッパの多くの国々は,補完代替医療に関する政策やシステム整備を着実に進めていることが,この調査研究から明らかになったこととも関連している.
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