特集 医療政策の新しい潮流
巻頭言
広井 良典
pp.13
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102010
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昨今の日本での日々のニュースや話題を見ていると,「これほど様々な問題や課題が一気に噴出した時代がかつてあったろうか」と思えるほど,多くの,大半はネガティブな性格を持った,話題や出来事で占められている.基調としては経済不況やそれに伴う日本社会の様々な「構造」的問題があり,戦後50年にわたって続いた経済成長がもはや期待できない状況において,真の意味で新しい発想に立った,また既得権の枠にとらわれない対応が求められているのである.
同様のことは医療についても言える.個々の医療関係者の努力もあって,WHO(世界保健機関)の評価にも見られるように,日本の医療システムは一定の良好なパフォーマンスを示してきたといえるが,現在に至って,国民の医療に対する意識や関心の高まりの中,従来とは異なる新しい次元で多くの課題や問題点が議論されるようになっている.医療政策について見れば,1980 年代前後からの医療政策の基調は,様々な規制的手段や競争原理導入といった手法を活用して,医療の効率性を高め,またその費用対効果を上げるというものであった.しかしながら,上記のような経済状況の変化や,医療や健康に対する人々のニーズの多様化,医療技術や生命科学そのものの急速な変化などの中で,従来型の枠に収まらないタイプの政策展開が求められるようになっており,先進諸国においてもそうした様々な試みが始まっている.
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