特集 相補・代替医療へのニーズにどう対応するか
巻頭言
広井 良典
pp.373
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102025
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本号では,東洋医学などを広く含むいわゆる相補・代替医療を特集する.相補・代替医療については,本誌でもこれまで個別の記事などでは扱ってきているが,特集としてまとまった形で取り上げるのは今回が初めてであり,その意味では画期的であるとともに,時代の変化を反映しているものといえるかもしれない.
相補・代替医療に対する人々の関心が高まっていることの背景には様々なものがあると考えられるが,最も大きい理由は,慢性疾患を中心とする「現代の病い」に対して,いわゆる西欧近代科学を基本的なパラダイムに置く現代の医学が,感染症や急性疾患の治療において挙げた成果ほどには十分な効果を必ずしも発揮していない,という現状にあると思われる.またこのこととも関連するが,慢性疾患の背景には,ストレスなど心理的要因や働き方などを含む社会的要因,ひいては環境的な要因などが広く関係しており,したがって「原因物質の特定およびその除去による病気の治療」といった単線的な因果関係に基づくモデルが妥当しにくく,“「複雑系」としての病気”とでも言い得るような,一回り大きな視野に立った「病気」についての理解が求められるようになっている,という背景もあるだろう.こうした意味では,相補・代替医療について考えることは,そもそも「病気とは何か」,「治療とは何か」,「科学とは何か」といった根底的な問いにつながっていく側面をもっているといえよう.
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