連載 〈続〉基本からわかる医療経営学・5
病院における人事評価と給与制度
厨子 直之
1
1和歌山大学経済学部
pp.724-728
発行日 2008年8月1日
Published Date 2008/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101262
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
今なぜ病院において人事評価や給与制度に注目するのか
読者の皆さんの病院では,既に医療専門職の働き振りを評価し,評価結果を給与に結びつけているところもあれば,今後そういう仕組みの導入を検討しているところもあるのではないかと思います.しかし,医療現場において,人事評価の実施は容易ではないでしょう.実際,「評価項目が多すぎて負担」「評価結果に納得できない」といった医療専門職の声を耳にすることが少なくありません.
ところが,昨今,病院においても,人事評価や給与制度に着目する必要性が出てきた医療界固有の事情が2つあります.その1つが,医療費抑制政策です.具体的には,診療報酬のマイナス改定と診断群分類別包括評価(DPC)の導入が挙げられます.診療報酬の単価切り下げにより,病院全体の収益は年々減少しつつあるのが現状です.また,DPCに基づく定額支払いの診療報酬体系が浸透すれば,病院の収入が患者の治療件数に比例して上昇しなくなります.病院の収益が右肩上がりに増加しないということは,多くの病院が採用している国家公務員給与体系,つまり全職員の給与額が勤続年数や卒後年数に応じて自動的に上がる仕組みが維持困難となることを意味します.そのため,限られた病院収入の中でいかに各専門職に給与を分配していくかが検討課題になります.当然,その場合,客観的な分配基準がなければ被評価者は不満を感じるでしょう.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.