特集 人口減少時代の病院
医療保険制度の将来
吉川 洋
1,2
1東京大学大学院 経済学研究科
2社会保障国民会議
pp.690-693
発行日 2008年8月1日
Published Date 2008/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101255
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日本の医療制度は試練の時を迎えたようである.地域医療の劣化,産科・小児科・麻酔科医の不足など様々な問題が噴出する中で,「医療崩壊」という言葉すら使われるようになった.
冷静に考えるならば,わが国の医療制度は先進国の中では比較的少ない投入にもかかわらず高いパフォーマンスをあげている.国民医療費の対GDP比は8%(2005年).これはOECD30か国中22位である(最も高いアメリカでは15.3%,フランス11.1%,イギリス8.3%).1人当たりの医療費も19位であり,所得水準の高い最先進国の中では一番低い.一方,平均寿命はよく知られているとおり香港と並び世界一なのだから,国際的に見る限り,わが国の医療制度は世の風潮とは逆に,実はかなりうまくいっているほうだと言うべきなのである.にもかかわらず,はじめにも書いたように,わが国の医療制度が多くの問題を抱えていることも事実である.本稿では経済学者の立場から,日本の医療保険制度について考えてみることにしたい.
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