短期連載 医療過誤における民事・行政・刑事責任・3【最終回】
民事責任の問題を含む医療紛争防止対策について
長谷川 幸子
1
1日本医科大学付属病院 医療安全管理部
pp.768-773
発行日 2007年9月1日
Published Date 2007/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101017
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医療者と患者の間には,診療契約が存在する.診療契約においては最善の医療を施すことを求められるが,医療の不確実性から,手術の成功,病気の治癒までを約束するものではない.契約の性質からして,医療者と患者との間の信頼関係が基礎とされており,医師は専門家として,患者に対し,十分な説明義務を負う.
医療過誤は,この診療契約に違反し,債務不履行(民法415条),不法行為(民法709条)とされる場合であるが,医療の不確実性からすると,どのような内容を説明し,約束したかが重要となる.治るつもりで受けた手術で,合併症により不幸にも死亡の結果に至った時,医師は仕方がないと考えても,やはり遺族は納得いかないことも多い.もちろん法的に見た場合,合併症の一言をもって責任がないとされるわけではないが,信頼関係の上に十分な説明がなされていれば,避けられない合併症まで紛争となることは少なくなるだろう.
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