連載 病院管理フォーラム
■医事法・2
医療行為と制裁(1)
植木 哲
1
1千葉大学法経学部法学科
pp.512-514
発行日 2007年6月1日
Published Date 2007/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100961
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連載第1回目では,違法な医療行為に対しては制裁が加えられることを理解されたと思います.その内容は刑事罰や行政処分を科すことであり(処罰・処分),民事の損害賠償責任を課すことです(責任追及).今回と次回は,このことを具体的に示すことにしましょう.
ここでは,皆さんの多くがご存知の都立広尾病院事件のてん末を考えてみます.これは点滴注射事故で患者が死亡した事案ですが(平成11年2月11日発生),関節リウマチの手術を受けた女性患者(58歳)が,血液の凝固を防ぐ「へパリン生食(生理食塩水)」を点滴投与されている最中に胸苦しさを訴え,意識不明となり死亡したというものです.事故の発生は,早朝に出勤した看護師 A が点滴の指示に従って生理食塩水を注入する際,低温保管庫に入れられていた注射器(夜勤の看護師が前夜に準備)を取り出して処置台に置く一方,隣室の患者に使用する消毒剤を注射器で吸い上げ,前記ヘパリン生食の注射器と同じ処置台に置いて患者の病室に運び込んだのが原因です.別の看護師Bは注射器の記載を十分に確認しないまま,消毒液の入った注射器を患者に注入してしまいました.
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