特別寄稿
医療事故防止のためのコミュニケーション研修―3 スキルは研修によって向上するのか
森永 今日子
1
Kyouko Morinaga
1
1北九州市立大学大学院社会システム研究科
pp.412-415
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100822
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◆効果測定の必要性
研修プログラムの開発に当たっては,内容の妥当性や課題を吟味するための資料の収集が必要である.そこで本研究では,心理学的手法を用い,開発した研修プログラムの効果測定を実施した.本稿では,効果測定の実施の手続きと,得られた結果について述べ,プログラムの効果と今後の課題について検討する.
◆効果測定の指標
交通産業や製造業などでは,安全性の指標として事故や労働災害の発生件数(率)が用いられる.しかし,医療現場では,「何をもって生じた出来事を事故とみなすか」という事故の定義が確立されていないため,ある医療機関で把握された事故の発生件数は,その医療機関における事故の定義に該当する出来事の報告件数を示しているに過ぎず,客観的な安全性の指標としては不適切である.また,研修を受けて事故や危険への意識が高まり,エラーや事故の発見・報告件数が増える可能性もある.さらに,医療事故は部署や職種を超えたエラーの連鎖の中で生成され,あるスタッフや部署で顕在化した事故は,そのスタッフ自身や部署により生成された危険のみではなく,他のスタッフや部署に潜在的に存在する危険の影響を受ける1).よって,特定のスタッフや部署における事故件数は,必ずしもそのスタッフや部署の安全性を示すものではない.
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