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はじめに―老人の専門医療を考える
亜急性医療とは何を指すのか明らかな定義はない.急性期を脱したもの,慢性期で手に負えないものとの考えもあるが,具体的に個々の患者がどこに分類されるのかは定かでない.治療を受ける病院の機能によっても異なってくると考えられる.亜急性医療があるとしても,それは一般病院で診ていくべきという考え方と,療養病床の範疇であるという考えもある.また支払い側は急性期以外の入院患者という表現を使い始めており,これらの考え方次第で守備範囲が変わってくる可能性がある.
老人病院の改革を目指す医師が集まり,「老人の専門医療を考える会」が発足したのは,1983(昭和58)年秋であった.当時の老人病院は,高齢者を受け入れ,寝かせきりにして床ずれを作り,“薬づけ,検査づけ,点滴づけ”でかせぐ悪徳病院としてのイメージがすっかり社会に定着していた.「老人の専門医療を考える会」は発足以来,活動の中心は常に,これらの悪いイメージを払拭し,わが国における老人病院の果たすべき役割,望ましい形を模索することにあった.
当会は1987(昭和62)年7月,「老人病院機能評価表」1)を作成し,老人病院の果たすべき役割,望ましい対応についての指針を世に問うに至った.老人病院の実態を少しでも社会に明らかにし,質の向上やイメージの改善を図ることも目的としている.そして「今,老人病院の社会への貢献を正しく認識してもらうためにも,老人病院はその情報公開と,質の向上が不可欠であることを再認識すべきである」と大塚2)は述べている.これはそのまま療養病床すべてに当てはまることである.
1990(平成2)年4月に介護力強化病院制度が発足し,診療報酬に初めて“老人病棟入院医療管理料”いわゆる“まるめ”が導入された.この定額医療は介護職員を病院職員として認めたこと,ケアプランに基づくチーム医療の導入,薬や不必要な検査の減少,療養環境の整備など老人病院の形を大きく変えることとなった.この定額医療は1998(平成5)年に療養病棟入院医療管理料,2000(平成12)年には入院基本料と変遷していく.
この制度の実践活動のため,1992(平成4)年9月26日に「老人の専門医療を考える会」のメンバーが中心になって「介護力強化病院連絡協議会」が約100病院で発足し,療養病床の向上発展と老人医療の質の向上を目指すこととなった.その後,介護保険の開始を見込んで,1998(平成10)年4月1日「介護療養型医療施設連絡協議会」と名称変更された.しかし介護保険だけでなく広く医療保険の療養病床も運営している会員が多く,現状に合わせるべく,2003(平成15)年8月22日に「日本療養病床協会」と名称変更された.今後,日本療養病床協会や全日本病院協会が中心となり療養病床のあり方について考えてをまとめていくと思われる.
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