連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第102回
病院の「成長と変化」の検証
山下 哲郎
1
1名古屋大学工学部社会環境工学科
pp.339-343
発行日 2003年4月1日
Published Date 2003/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100601
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一昨年の米国における同時多発テロの影響を考慮し,日本医療福祉建築協会の第23回海外医療福祉建築視察旅行(2002年10月5日~19日)は欧州を中心に,わが国の病院建築関係者の間で枕詞的に語られるまでになった「成長と変化」に対応した病院建築の生みの親である英国と,そんなことにはお構いなしのフィンランド(歴史的病院建築)に絞ったものであった.折しもわが国の低成長経済状況下において,病院建築関係業界・学界がこれまで歩んできた道を再確認する意味で,むしろ貴重な機会が得られたと考えた結果である.本稿では特に各施設の「成長と変化」の様態について概観し,その検証を試みたい.
Vaasa Central Hospital
Vaasa Central Hospital は,フィンランド西海岸のVaasa医療地区(17市町村・地区人口167,000人)を受け持つ3病院の一つで,当該地区の半数以上に医療サービスを提供している.敷地内に建つ建物は分棟配置であり,地下通路(トレンチ)により人や物の動線,エネルギーの供給が確保されている.見学したのは,主として配置図(図1)中のA~F・T棟である.最も古い建物であるK棟(口腔外科診療棟)は1902年の竣工であり,100年以上にわたって診療を続けている427床の地域中核病院である.
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