特集 医療政策の新しい潮流
病院における総額予算制
松田 晋哉
1
1産業医科大学医学部公衆衛生学教室
pp.42-47
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100543
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少子高齢化の進展と医療技術の発展により増大を続ける医療費をいかに適正化するかは,先進国共通の課題である.1970年代のオイルショックを契機として福祉国家の存続の危機に見舞われた欧州諸国は,1980年代以降多くの医療制度改革を行ってきている.特にわが国と同様の社会保険制度を有するフランスやベルギー,ドイツなどでは,増大する医療費に保険料や自己負担の増額で対応することが次第に困難となり,このような需要側の対策から,供給側の規制に方針を転換している.
わが国に比較して病院医療費の全医療費に占める割合の高い欧州諸国では,まず病院医療費の適正化が課題となり,地域医療計画の制定による病床や高額医療機器の数の制限に加えて,従来の出来高を基本とした支払いに代わって総額予算制が導入されている.総額予算制については,わが国においても日本医師会が特定機能病院などの特定病院系列においてその導入を提案するなど,一定の関心を集めている.そこで,本稿では,欧州,特にフランスにおける総額予算制について説明した後,わが国の医療制度を前提としたとき,その導入が可能であるのかについて私見を述べてみたい.
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